委任手数料と、データで見るステーク量と報酬の関係

委任手数料の設定はプールごとに違う
ステーク・プールを立ち上げる時に迷うのが、委任手数料の設定です。
プール運営では二種類の手数料があります。(Cardano Docs)
① 固定費用:ステーク・プールを稼働させ続けるための費用です。現在340 ADAが設定可能な最安値です。
② 委任手数料:パーセントで表現されるプールの利益率です。プールにより活動内容が違うということもあり、設定値は様々です。マージン、変動手数料などとも呼ばれます。

グラフはエポック290(2021年9月)時点での、各プールにおける手数料の分布です。
左端から見て、669プールが手数料0.1%以下、4 プールが0.1~0.2%…、と右へ行って、139プールが95%~100%となっています。
この記事では委任手数料について考えていきたいと思います。
SUGARステーク・プールのこれまで
シェリーメインネットとプールの立ち上げキャンペーンで、ほぼ一年間、0.01%+340 ADAの手数料で、2021年8月まで運営してきました。その後からは0.9%で運営するとお約束していたため、現状0.9%となります。(2021年9月時点)
委任手数料を設定した半年前からADAの価格がかなり上がったこともあり、どう設定するのが当プールの考えにあっているか再度確認し、今後に活かしていきたいと思います。
結論としては…
委任者様、カルダノ・ネットワーク、プールの3つにメリットのあるプールを目指したいと考えています。
- 委任者様へのリターン、長期で見ても良い報酬を目指す
- カルダノネットワークをより安全なものへするために分散化に貢献
- プール収益
→ 委任量に応じた段階的な委任手数料はどうだろうか?
報酬と委任量の関係
プールに支払われる(ひいては委任者様へ支払われる)報酬は何で決まるのでしょうか?
一つはブロック生成数です。これはブロックチェーンのネットワークにおいて、トランザクションを検証しブロックをつなげていく仕事に対する対価と考えられると思います。
ブロック生成には、運の要素があり、運がよければ成績が良くなります。(Luckについて、もう少し説明した記事はこちら)
もう一つはプールに委任されているADAの量です。
「流通しているADAのうちのどれくらいの割合がプールに委任されているか」が報酬に関わってきます。
ある時にあるプールへ100K ADA委任したと仮定して、プールの有効ステークを1M~100Mで変動させた時、報酬はどう変わってくるのかシミュレーションで確認してみました。(計算式についてはこちら)
- ブロック生成は最適なパフォーマンス(100%)であることを仮定しています。(こちらに関しては後述する通り注意が必要です)
- 有効ステークは1M単位で変動させています。
有効ステーク(ADA) | 100K ADA委任した場合の報酬 |
1000000 | 31.82466822 |
2000000 | 48.82519796 |
3000000 | 54.49204121 |
4000000 | 57.32546283 |
5000000 | 59.0255158 |
6000000 | 60.15888445 |
7000000 | 60.96843349 |
8000000 | 61.57559526 |
9000000 | 62.0478322 |
10000000 | 62.42562175 |
11000000 | 62.73472229 |
12000000 | 62.99230607 |
13000000 | 63.21026158 |
14000000 | 63.39708059 |
15000000 | 63.5589904 |
16000000 | 63.70066148 |
17000000 | 63.82566538 |
18000000 | 63.93677995 |
19000000 | 64.03619825 |
20000000 | 64.12567472 |
21000000 | 64.20662963 |
22000000 | 64.28022499 |
23000000 | 64.34742076 |
24000000 | 64.40901689 |
25000000 | 64.46568532 |
26000000 | 64.51799464 |
27000000 | 64.5664292 |
28000000 | 64.61140414 |
29000000 | 64.65327737 |
30000000 | 64.69235905 |
31000000 | 64.72891933 |
32000000 | 64.76319459 |
33000000 | 64.79539256 |
34000000 | 64.82569654 |
35000000 | 64.85426885 |
36000000 | 64.88125382 |
37000000 | 64.90678014 |
38000000 | 64.93096297 |
39000000 | 64.95390566 |
40000000 | 64.97570121 |
41000000 | 64.99643356 |
42000000 | 65.01617866 |
43000000 | 65.03500538 |
44000000 | 65.05297635 |
45000000 | 65.0701486 |
46000000 | 65.08657423 |
47000000 | 65.1023009 |
48000000 | 65.11737229 |
49000000 | 65.13182852 |
50000000 | 65.14570651 |
51000000 | 65.15904026 |
52000000 | 65.17186117 |
53000000 | 65.18419827 |
54000000 | 65.19607845 |
5 5000000 | 65.20752662 |
56000000 | 65.21856592 |
57000000 | 65.22921788 |
58000000 | 65.23950253 |
59000000 | 65.24943855 |
60000000 | 65.25904337 |
61000000 | 65.26833328 |
62000000 | 65.27732351 |
63000000 | 65.28602834 |
64000000 | 65.29446114 |
65000000 | 65.30263447 |
66000000 | 65.31056013 |
67000000 | 64.52364563 |
68000000 | 63.57476849 |
69000000 | 62.65339503 |
70000000 | 61.75834653 |
71000000 | 60.88851067 |
72000000 | 60.04283691 |
73000000 | 59.22033229 |
74000000 | 58.42005753 |
75000000 | 57.64112343 |
76000000 | 56.8826876 |
77000000 | 56.14395139 |
78000000 | 55.42415715 |
79000000 | 54.72258554 |
80000000 | 54.03855322 |
81000000 | 53.37141058 |
82000000 | 52.72053972 |
83000000 | 52.0853525 |
84000000 | 51.46528878 |
85000000 | 50.85981479 |
86000000 | 50.2684216 |
87000000 | 49.69062365 |
88000000 | 49.12595747 |
89000000 | 48.57398042 |
90000000 | 48.03426953 |
91000000 | 47.50642041 |
92000000 | 46.99004628 |
93000000 | 46.48477696 |
94000000 | 45.99025806 |
95000000 | 45.50615008 |
96000000 | 45.03212768 |
97000000 | 44.56787894 |
98000000 | 44.11310467 |
99000000 | 43.66751775 |
グラフにしてみると下記の形になります。

横軸が有効なステーク量(1000000 = 1M ADA刻み)、縦軸が100K委任した委任者へ支払われる報酬です。
プール全体の委任量が5Mほどになるまで急激に上がり続けて、横這いになり、65Mあたりで「飽和」し、そのあとは減っていきます。
PoolTool でも似たグラフを確認することができます。
65Mあたりで飽和をした後に報酬が減っていくのは、1プールに支払われる報酬はk=500(z0 = 0.002)というパラメータによる、上限が設定されているためです。
飽和状態では最大限度の報酬がプールへ支払われます。さらに委任量(委任者数)が増えていくとプールの最大報酬を分割する人数も増えるため、個々の委任者の報酬が減っていきます。
5M以下を見てみると、報酬が少ないのが見て取れます。
これを見て、「ステーク量が少ないと報酬も少ない」のかというと、そうでもありません。このシミュレーションではブロック生成数の変動が考慮に入っていないため、 単純にそうとも言えないということだけは誤解のないようお願いいたします。
実際にはランダムなプールのパフォーマンスを掛け算して、報酬が割り出されます。
パフォーマンスについて
少し話がそれますが、パフォーマンスに関して確認していきます。
よくLuckや、パフォーマンスなどの指標が話されていますが、小さいプールは3000%やそれ以上のパフォーマンスをだすことがあります。(「Pool Performance vs Active Stake」グラフの矢印部分)
その場合は委任者様の報酬も掛け算で増え、大きなものとなります。

上のグラフはプールのパフォーマンスと有効ステーク(プールの大きさ)の関係を表したものです。
横軸で右へ行くほどプールのサイズが大きくなり、縦軸がプールのパフォーマンス(%)を表しています。
計算をした時のエポックにおいて、左に表示されている小さいプールは高いパフォーマンスを出すことがあるということが分かります。
パフォーマンスが低い時もありますが、高い時もあるため、長期でみると大規模プールと近い報酬率に近づきます。
同じグラフを1M以上のステークに絞って、ズームしてみます。

(横軸は10M単位です)
委任量(有効ステーク)が大きくなるにつれて、パフォーマンスは50%~150%の間に収まり100%近くに落ち着いていくのが分かると思います。
反対に20M以下はもう少しばらつきがあります。
小規模プールは、ブロック生成が安定せず、0ブロック(報酬なし)ということもありますが、高いパフォーマンスを出すことがあるため、掛け算で報酬が多くなることがあるということを見ました。
この章では、シミュレーションを通して、委任量と報酬の関係はざっくりと3段階あることが分かりました。

- 0~5Mほどまでは委任量により大きく変動がある
- 5M~飽和までは横這いで少しずつ上昇
- 飽和以降は委任量が増えるにつれ減っていく
委任者様へのリターンという観点では、7~10M以上あると安定してくると見て取れました。
そのため、当プールで委任手数料を考える時、委任量も考慮に入れ10Mを一つのラインと考えたいと思います。
段階的な手数料
参考:「複数プール運営について」(CofeePoolさん)
今回参考にさせていただいたブログです。
この記事ではデータを元に、委任量に応じた手数料を設定していく方法を検討されています。
とてもよく考えられており、当プールも「段階的なマージン設定」を参考にさせていただこうと思います。
CofeePoolのオペレータご本人に確認させていただいたところ快諾いただけました。ありがとうございます!
他の記事も勉強になる上、興味深く読めるのでお勧めです。(ブログの書き方も見習いたいです)
委任量と報酬の関係を見てきて、SUGARステークプールでも段階的な手数料を設定したいと思います。
CoffeePoolさんの内容をそっくりそのまま適応するのでは申し訳なく感じるので少し変えたいと思います。
- 委任者様へのメリットを考え、10Mまでは報酬安定化のため0%で運用
- 飽和の50%に委任手数料が0.9%になるように、10Mごとに段階的に引き上げ
- そのあとは分散化を促進するために引き上げ
という考え方で、下記のように運営をしてまいりたいと思います。
0~10M → 0% (委任者様の報酬安定化のため)
10M~20M → 0.3%
20M~30M → 0.6%
30M~40M → 0.9% (飽和の約50%に0.9%を設定)
40M~50M → 1.2%
50M~60M → 1.5%
60M~ → 1.8%
こうすることで、下記の3つに良いバランスでの運用ができるのではないかと考えました。
- 委任者様へのリターンを重視し、長期での良い報酬
→ 委任量が10M集まるまでは0%で運用し、0.9%へ向けて手数料を少しずつ引き上げる。 - カルダノネットワークの分散化へ貢献
→ 一定のラインからは手数料を引き上げることで、新規の小さいプールと競合しないようにする。 - プールの安定運用と収益
→ 複数プール運営での収益をさけ、手数料で収益を得る。安定したブロック生成を目的として、10M以下にステーク量が減った場合は手数料は0%にて運用する。
手数料の報酬への影響
ちなみに、手数料が変わるとどれくらい報酬へ影響があるのでしょうか?
下記は、ご参考までに、委任手数料の変更による委任者様の報酬への影響をシミュレーションした表になります。
- 100K ADAを委任したと仮定
- 手数料が0~5%の間で変動した時の、それぞれの報酬シミュレーション(ADA)
- エポック286の時のデータを使用(Luck/もしくはパフォーマンス: 80%)
- プール手数料は固定費(340 ADA)を含む
委任手数料(%) | 報酬結果(ADA) | プール手数料(ADA) |
---|---|---|
0 | 50.49422886 | 340 |
0.01 | 50.49369577 | 340.6440402 |
0.9 | 50.01445257 | 397.963619 |
1 | 49.9611441 | 404.4040211 |
2 | 49.42805934 | 468.8080422 |
3 | 48.89497458 | 533.2120634 |
4 | 48.36188983 | 597.6160845 |
5 | 47.82880507 | 662.0201056 |
これはエポック286の時に当プールへ100Kを委任していた場合のシミュレーションです。10K の方は1/10、1Mの方は10倍で考えていただければと思います。
個人的には2%を越えるあたりで気になり始めましたが、皆さんはどのラインが気になりましたでしょうか?
また、5%は0%と比べて、プールの利益が倍近く違います。
複数プール運営
以下、 CofeePoolさんの記事で良い機会をいただけたと思い、「複数プール」について少しだけ触れさせていただきます。
委任が集まらなくブロック生成ができなかった時、赤字が長い間続いていた経験があります。
SNSでもそうしたSPOさんが嘆いていたり、残念ながらリタイアしていったプールも多数あります。
原因の一つに委任が一部の複数運営プールに集まり、小さいプールの努力が報われなかったということがあるかもしれません。
実際、議論を呼び、緩和されるような処置がとられたことがありました。
今のADAの価格帯で、手数料が0%だとしても、固定費用340ADAなので、2プールを3M委任を集めて運営することができれば月約100万円近く稼げてしまいます。(2021年9月現在)
そのため、複数プール運営はオペレータにとってとても魅力があるといえます。
一方で、ADAの価格が一年前と比べて20倍上がっております。カルダノの場合、インフラが整えば低コストでもプール運営を始められるとはいえ、「既存プールとの競争」という意味では新規参入のハードルは上がっていると思います。
そういった状況を鑑みると、複数プール運営によるプールの利益を考えるよりは、新しいオペレータさんが増え、プールが一つまた一つと立ち上がっていく方がカルダノの分散化と多様化にとって良いのではないでしょうか?
人は自分の利益のために行動をするという考えのもと、ステーキングが成り立っている部分もあります。「複数プール運営反対」といったことを言うつもりはありません。(過剰なプール数の運営はさすがに問題があると考えます)
システム上も、手数料の設定、複数プールの運営は自由です。
どのプールへ委任するかも自由にできます。
それがカルダノの魅力的なところでもあると思います。
SUGARステークプールでは、オペレータの利益化、非複数プール化、ネットワークの多様化などを考慮に入れつつ、委任者様へのメリットとのバランスを追求しながら運営したいと思います。
また、今後も手数料、固定費、誓約金に関しては、カルダノ全体として設定改善がされていくことと思います。
ADAの価格、状況も変わり続けていくため、軸を据えてしっかりと考えていきたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございます。
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ステーキングをご検討の際は、ぜひSUGARステークプールへ委任のご協力をよろしくお願いいたします。